ユークンスクール通信2024年4月号        

進級、新入学おめでとうございます。新年、というのは カレンダーも手帳もそうですが 一年に二回 元旦ともうひとつ4月1日があります。新たな気持ちでいい一年としたいものです。 

数年前の引用となりますが 信州大学の山沢清人学長の入学式挨拶です。 

皆様は、もしかしたら、個性の発掘に没頭する「自分探し」をしませんでしたか。また、これからしようと思っていないですよね。若い時の自分探しは勧められません。特に、解剖学者の養老孟司さんは、「個性は徹底的に真似をすることから生まれる」とまでおっしゃられています。伝統芸能の世界に見られる、師匠と弟子の個性の違いを指摘されてのことです。 

 個性を発揮するとは、なにか特別なことをするのではなく、問題や課題に対して、常に「自分で考えること」を習慣づける、決して「考えること」から逃げないことです。自分で考えると他人と違う考えになることが多くなり、個性が出てきます、豊かで創造的な発想となります。 

 学生で言うと、普段の勉強を真剣に取組むこと、そして身につける「知識の量」を主とするのではなく、「知識の質」すなわち自ら探求的に考える能力を育てることが大切となります。 

 受験勉強と同じ気持ちでは駄目です。大学での勉強と生活の仕方を変えなければなりません。 

 その理由をお話しましょう。創造性を育てるうえで、特に、心がけなければならないことは、時間的、心理的な「ゆとり」を持つこと、ものごとにとらわれ過ぎないこと、豊か過ぎないこと、飽食でないことなどが挙げられます。 

 自らで考えることにじっくり時間をかけること、そして時間的にも心理的にもゆったりとすることが最も大切となります。 

 子供の頃をちょっと思い出して下さい。子供の頃は、例えば、夏休みがゆっくり過ぎていたと感じませんか。大人になると、忙しさで、時間は走馬灯のように速く過ぎていきます。脳科学者のDavid Eagleman(デイウィッド イーグルマン)さんは「記憶が詳細なほど、その瞬間は長く感じられる。しかし、周りの世界が見慣れたものになってくると、脳が取り込む情報量は少なくて済み、時間が速く過ぎ去っていくように感じられる」と言っています。 

 自分の時間を有効に使うために、自力で時の流れを遅くする必要があります。 

 そのために五つの方策が提案されていることは良く知られています。 

 一、学び続けること。新しい経験が得られて、時間感覚がゆっくりとなる。 

 二、新しい場所を訪ねる。定期的に新しい環境に脳をさらす。 

 三、新しい人に会う。他人とのコミュニケーションは脳を刺激する。 

 四、新しいことを始める。新しい活動への挑戦。 

 五、感動を多くする。 

 皆様はどうでしょうか。残念なことですが、昨今、この信州でもモノやサービスが溢れ始めました。その代表例は、携帯電話です。アニメやゲームなどいくらでも無為に時間を潰せる機会が増えています。スマホ依存症は知性、個性、独創性にとって毒以外の何物でもありません。スマホの「見慣れた世界」にいると、脳の取り込み情報は低下し、時間が速く過ぎ去ってしまいます。 

 「スマホやめますか、それとも信大生やめますか」 スイッチを切って、本を読みましょう。友達と話をしましょう。そして、自分で考えることを習慣づけましょう。自分の持つ知識を総動員して、ものごとを根本から考え、全力で行動することが、独創性豊かな信大生を育てます。 

長い引用となってしまいましたが、個性についての認識・知的に感動の多い体験、時間をつくる。・そのために自分の時間を意識してゆっくりと追い立てられるものにしない、意識的に時を掴まえる といった主張は この通信でも過去にもたびたび触れていますが実に同意できるものがあります。 

また この記事が話題になったのは「スマホやめますか」の一節なのですが 極論と思う方もいるから話題になりうるのでしょうが 主張されている方向は正しいと思います。要するに保護者なり生徒なりのコントロールを及ぼせるなら何も問題はない、しかし スマホというツールが意志により非常にコントロールしにくいものという冷静な評価の上、関わっていくことが求められると思います。 

 ともあれ意識的に時間を過ごして各自有意義な一年となるよう 学習を通じて指導、関わっていきたいと思います。 

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